研究概要 |
本研究では、その特異な構造と物性との相関に関する知見を得ることを目的として、舟形に変形したベンゼン環を構成単位とする新奇なベルト型分子[O^4]パラシクロファン1を設計した。また、1の合成に際して、Dewarベンゼンの開環異性化を活用するという、これまで前例の無い合成戦略を立案した。今年度は、主にDewarベンゼンのカップリング反応を機軸とした他核シクロファン類の柔軟な新規構築法の開発に検討を加えた。すなわち、3,5-ジオキソビシクロ[5.2.2]ウンデカ-8,10-ジエンの8,10-及び8,11-ジクロロ誘導体(2aおよび2b)をビルディングブロックとして、そのDewarベンゼン骨格の弓なりの分子形状を活用した大環状構造の構築を計画した。2aおよび2bはアセチレンジカルボン酸ジメチルと1,2-ジクロロエチレンとの光[2+2]環化付加反応、リチウムアルミニウムヒドリドによるジオールへの還元、パラホルムアルデヒドによるアセタール化、そしてカリウムt-ブトキシドによる脱塩化水素の4段階で合成した。2bの分子構造をX-線結晶構造解析によって詳細に検討し、大環状構造の構築に活用できる二面角を見積もった。また、2aとトリメチルシリルアセチレンとのカップリング反応によるジエチニル体への誘導、および1,3-ジエチニルベンゼンとのカップリングによる2:1付加体への誘導に成功した。
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