研究概要 |
1,アズレンがナフタレンの異性体の炭化水素であるが、極性構造を示すことを利用し、極めて安定なトリアズレニルメチルカチオン及びその各種の誘導体を得、特にヘキサ-t-ブチル体はpK_R+14.3という、最も安定なカチオンであることを見いだした。またジアズレニルフェニル-、アズレニルジフェニルメチルカチオン類も合成し、安定性の検討及び酸化還元電位等を測定した。 2,これらのカチオンは分子プロペラとしての性質を有し、その動的立体化学を温度可変NMRによって研究し、これをflip mechanismに従ってコンピュータによって解析し、one-ring flip機構で回転する初めての例であることを見いだした。またそれぞれの環にすべて異なる置換基を持つカチオンを合成し、この場合も同じ機構で回転すること及びこの解析手法の正当性を証明した。 3,2位にメチル基を有するトリ(2-メチルアズレニル)メチルカチオンではその動的立体化学はtwo-ring flipに変化すること、その前駆体のトリ(2-メチルアズレニル)メタンの動的立体化学についてもtwo-ring flipで回転することを見いだした。 4,1-及び2-ナフチル基と二個のアズレン環からなるメチルカチオン類を合成し、その安定性は極めて高いこと、またその動的立体化学についてナフチル基についてone-ring flipで回転回転している等の興味ある結果を得た。 5,6-メトキシアズレンからトリ(6-メトキシアズレニル)メチルカチオンを得、このものが炭化水素ではないが、これまで知られているカチオンの中で最も高い14以上(正確な値は測定不能)のpK_R+値を有することを見いだした。 6,アズレンに関するわれわれのこれまでの研究を総合論文として取りまとめた。
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