研究概要 |
アミド系芳香族化合物、特にナフトアミド系の光環化反応を検討して以下の研究成果を得た。 1.Nーシンナモイル-1-ナフトアミドの分子内光環化反応(分子内、分子間環化反応の選択性の制御):溶液中での光反応では分子内[4+2]環化反応のみが起こり、結晶中での固相反応では分子内[4+2]環化反応と分子間[2+2]環化反応のふたつの反応が起こった。シンナモイル基パラ位の置換基の立体障害を利用することにより選択的に分子間[2+2]環化反応のみに制御が可能となった。(結果はJ.Chem. Soc., Perkin Trans.Iに印刷中) 2.Nーシンナモイルアクリルアミドの分子内光環化反応(ベンゼン環への[4+2]環化反応)ベンゼン環への光[4+2]環化反応の例はきわめて限られておりまた収率も良くないが、この系においてはぼ定量的なベンゼン環への光[4+2]環化反応を見い出した。(結果はJ.Chem.Soc.,Perkin. Trans1に投稿中) 3.N-1-ナフトイル-1-ナフトアミドの分子内光環化反応(安定なビラジカルの生成):分子内に2個のナフトイル基を有するアミドの光反応は[2+2]環化と[4+4]環化の2種類の分子内環化反応が可能な系である。光反応を酸素雰囲気下で行うことにより、この反応の中間体であると考えられるビラジカルを捕捉することに成功した。得られた1,8-エピジオキシドの構造は単結晶X線回折によりアンチ体と決定された。これは芳香族系の光反応におけるピラジカル中間体捕捉の最初の例である。ピラジカル中間体の寿命はレーザーフラシュフォトリシスにより300ns程度であることが判明した。また環化反応のペリ選択性はナフトイル基の4位の置換基を選ぶことにより制御が可能となった。
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