研究概要 |
1)リンを中心元素とする5価リン-炭素σ-結合を有するオクタエチルポルフィリン(1および2)の合成 OEPH_2とRSbCl_2の反応では、RSbCl_2の速い不均化のためアンチモン化合物OEPSb(R)またはその酸化物を合成することができなかったが、OEPH_2とRPCl_2の反応では、リン-炭素結合を有する5価化合物[OEPP(R)OH]^+Y^-(1)を合成できた。また、この化合物の水酸基のプロトンをDBUなどの塩基で引き抜くことにより、電荷を持たないOEPP(R)(=O)(2)も得られた。 2)1からの官能基変換による種々のリンオクタエチルポルフィリン(3および4)の合成 上記で得られた1に、PX_3(X=Cl,Br)を反応させて、対応するハロゲン化物3を得た。3をアミンやアルコールなどの求核試剤と反応させることにより、炭素ーリン-酸素結合および炭素ーリン-窒素結合を有するポルフィリン4を得た。 3)有機アルミニウムを用いたリンオクタエチルポルフィリン(5)の合成 2つのリン-炭素σ-結合を有するリンオクタエチルポルフィリン(5)は、我々の方法である有機アルミニウム試剤を用いた反応によって、ジクロロ化合物[OEPP(Cl)_2]^+Cl^-(6)から合成することができた。 4)リンオクタエチルポルフィリン(1-6)のX線構造解析 上記で合成したリンポルフィリン(1-6)を結晶化させることができ、そのX線構造解析を行った。それにより、軸配位子が電子求引性になるほど、リン-窒素間の結合距離が短くなり、ポルフィリン骨格のひずみが増大することがわかった。これは、軸配位子のひずみに対する影響を系統的に明らかにした初めての例である。また、2はリン原子と酸素原子の間にはほぼ完全な二重結合性を有する極めて珍しい型の化合物であることも見いだした。
|