研究概要 |
1.平成7年度に引き続き,パラジウム触媒によるカップリング反応によって鎖長を延ばし,逐次合成により完全に単分散性で構造に任意性のない1,2-シクロペンテニレンエチニレン系および3,4-チエニレンエチニレン系のシス型エンインオリゴマーを系統的合成にした。3,4-チエニレンエチニレン系においては,末端に直鎖のノニル基を導入することで溶解性が向上し,8個のチエニレンエチニレンユニットを持つオリゴマーの合成にも成功した. 2.分光学的測定や各種構造解析法によって置換基と構造との相関が得られ,シクロペンテニレン系は鎖長の伸長に伴ってパイ共役系が拡張されているこが分かった。一方,チエニレン系はパイ電子共役系がほとんど拡張されず,鎖長の長さにかかわらず固体状態においても溶液状態においても自発的にら旋構造をとる傾向の強いことが確かめられた. 3.固体状態の熱反応ではラジカル反応の兆候が見られたが,溶液状態ではかなり安定で,200℃以上でアセチレン結合の関与する反応が生起したが,多重Bergman反応には成功しなかった。しかし,チエニレン系においては四塩化テルルを用いるイオン反応で多重反応が生起し,ペンタレン骨格を有するチオフェン縮合多環系の合成に成功した. 5.これらのオリゴマーは,可視領域に強い蛍光を有し,共役系に由来するキャリヤ移動能も期待できることから,EL素子等の電場発光材料としての利用が期待できる.また,チエニレン系においてはら旋構造の形成する内部筒状空間による包接機能も期待で,これらの機能について検索中である.さらに,ニチニレン部位をジエチニレンにすることでさらに大きな空間の形成が可能と考えられ,合成を検討している.
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