研究概要 |
マルチ銅オキシダーゼ(ラッカーゼおよびアスコルビン酸オキシダーゼ)に様々の阻害剤(N_3^-,SCN^-,OCN^-,F-)を作用させ、吸収、CDおよびESRスペクトルを測定し、阻害剤結合部位がタイプ3銅部位であることを特定した。また、阻害剤の結合は2段階で起こり、77Kと室温とで結合定数は著しく変化することを見いだした。タイプ3銅部位は休止状態においてはESR非検出であり、その構造や性質に関する情報が限られているが、嫌気下においてESRスペクトルが測定できることを発見し、これより、タイプ3銅の立体構造が、タイプ1銅とタイプ2銅の中間的な4面体的ひずみを有していることがわかった。タイプ3銅部位は酵素反応中における酸素の結合部位であり、阻害剤の働きは、酸素の結合阻害であることがわかった。また、阻害剤の結合したタイプ3銅のESR測定の成功は、配位数の増加による酸化還元電位の低下によるものであると考えられた。また、これまで前例が限られている金属タンパク質の室温でのESRスペクトル測定によって、タンパク質のコンフォメーション変化が著しく、そのために、タイプ2銅部位の立体構造が顕著に変化し、それ故、タイプ2銅のESRパラメータや線巾が著しく温度依存することを見いだした。このような知見に基づいて、来年度はさらに詳細な磁気的検討を行う予定である。
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