研究概要 |
本研究は,マルチトレーサ法および中性子放射化分析法によって,微量金属元素およびセレンの生体挙動を検討した。次のことが判った。以下にその概要を箇条書きにする。 (1)マルチトレーサを「生体微量元素の生理作用の研究」に適用する利点を整理した。それによりこれまで動物実験等で問題になっていた試料差・個体差を克服した。 (2)理研と共同開発したマルチトレーサはセレンと他15元素の放射性同位体を含み、特にセレンと他の元素(特に第一遷移金属元素間)に繰り広げられている生体内反応を追跡するのに、適していることが判明した。 (3)同じ追跡性を利用して幾つかのセレンディピティが発見できた。幾つかを挙げると、(a)バナジウムの骨集積性が新しく発見され、バナジウムという元素が骨コラーゲンの生成に関わっている可能性を示唆した。(b)低酸素状態におけるルビジウムの細胞への異常集積性が観測され、細胞の活性についての知見を得た。(c)脳への微量元素の移行についての老化の影響があることが、微量元素の研究で判った。 (4)酸素は生命にとって必須のもの。老化の問題を「活性酸素の生成」という目で追及する必要がある。この問題に本法が、極めて有効であることが判った。 (5)中性子放射化分析法の検討も京都大学原子炉を使って始めた。 (6)老齢マウスと若いマウスの局所脳組織の放射化分析を行い,老化に伴い微量のマンガンが減少することが判った。
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