研究概要 |
昨年度に、Zn_<0.25>V_2O_<5・>H_2Oで表される三斜晶系の新しい層状複合酸化バナジウムを合成し、その単結晶構造解析からV_2O_5層と層間Zn^<2+>イオンと水分子の構造を明らかにした。この新しい層状複合バナジウム酸化物をσ-相と名付け、その成果はJ.Solid State Chem.に掲載された。この化合物は基本的に単斜晶系P2_1/aをもつが、層間水分子の配置が晶系を三斜晶に歪ませている。本年度の研究によって、ZnがMn,Co,Niに置き換わった同形の複合酸化物の単結晶を合成し、構造解析を行った。その結果、Mn,Coにおいては上記の格子歪みが起こらず空間群はP2_1/aであり、Niでは格子歪みにより三斜晶をとることを明らかにし、Znの結晶データよりも良質のデータが得られσ-相の構造を確定した。格子歪みは層間イオンのサイズによることが示唆される。これらの成果について投稿準備中である。 水和バナジウムブロンズのBa_<0.4>V_3O_8(VO)_<0.4>nH_2Oは基本的にはV_3O_8層の積層と層間Ba^<2+>イオンからなる層状構造をとるが、層間がVO_5ピラミッドによって部分的に繋がったトンネル状構造ともいえる特異なブロンズであることを既に我々が明らかにした。本研究では、水熱合成によって新たに層間にK^+、Rb^+やNH_4+イオンをもつ同形のブロンズM_<0.4>V_3O_8(VO)_<0.4>・nH_2O(M=K,Rb,NH_4)の合成に成功し、その結果をMater.Res.Bull.に報告した。この化合物の生成は層間カチオンのサイズによって規定され、また構造的にはよく知られたβブロンズと関連していることを結晶化学的に議論した。 アルカリヘキサバナジン酸AV_3O_8はA=K,Rb,Cs,NH_4について生成することが知られているが、本研究によって水熱合成法で単結晶が生成することを明らかにした。これらの構造解析を行い、RbV_3O_8について新しい構造データ、KV_3O_8とCsV_3O_8については改良された構造データをMater.Res.Bull.に報告した。
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