研究概要 |
1.数種類のプリンチオン系配位子を含むCo(III)ビス(エチレンジアミン)型錯体を合成した.プリンチオン系配位子ではピリミジン-2-チオン系とは異なり,4員環と5員環のN,Sキレート配位による連結異性体が可能となる.単結晶の構造解析および^1H・^<13>C-NMRスペクトルに基づき,これらの錯体の配位様式について解明しJ.Chem.Soc.,Dalton Trans.,(2),305(1996)に発表した. 2.ピリミジン-2-チオン系を含むビス(ビピリジン)Ru(II)錯体を系統的に合成し,その立体化学を同じd^6電子配置のCo(III)ビス(エチレンジアミン)型錯体と比較した.その結果,Ru(II)錯体ではほとんどの系で複数の連結異性体が存在し,その存在比はCH/π相互作用に大きく依存するという興味深い結果が得られ,Chem.Lett.,(1),35(1996)に速報した.またこの本論文は,CH/π相互作用をもつ異性体のx線構造解析結果と共に,J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,(13),2851(1996)に詳細に報告した. 3.新しい試みとして,4-アミノ-6-ヒドロキシピリミジン-2-チオン配位子(H_2atuc)が配位したCo(III)錯体を原料にしてH_2atucとの反応を試みたところ,組成的には同じでありながら従来の合成法では生成しない別種の二量化錯体が生成していることを,NMRスペクトルで確認した.また,二量化錯体自身を原料錯体とすることにより,三量化錯体が生成することも確認した.
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