研究概要 |
気体分子の固体表面への吸着は、触媒反応等表面反応の素過程として重要であるため、従来より広く研究が進められている。気体の吸着機構を理解するためには分子-表面混成軌道の様相を解明する必要があるが、従来よりこの目的で利用されている光電子分光法では、スペクトルには下地の準位が大きく重なって観測され、吸着結合軌道のみを抽出することは容易ではない。本研究は内殻ホール超励起状態が緩和される際の自動イオン化過程により放出される電子を分光することにより、吸着種近傍の電子状態のみを選択的に観測し、表面における二原子分子の吸着機構の解明を目指したものである。 研究は、現在Au(100),Ni(100),Fe(100)単結晶表面のAr^+ or Ne^+イオン衝撃+加熱と酸素処理、水素処理を並用した表面清浄化法の確立と、CO,NO,N_2分子の分子状吸着条件(基板温度,露出圧,露出時間の制御)の確立を目指して予備的研究を進行中である。実験として、真空系及び電子分光系の立上げに手間どり、時間を要したため、現在予備実験の段階にある。予備実験が終了しだい、放射光を用いた内殻脱励起スペクトルの測定に移る予定である。また、内殻脱励起スペクトルの解析を目指して、各種のイオン化状態に対応した局所状態密度の計算方法の開発を行ない、1イオン化状態を終状態とする光電子スペクトルに対しかなり良い近似を得る結果を得た。
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