半導体基板上にIII-V族化合物半導体薄膜のヘテロ接合を形成し、種々のデバイスを作製する場合、界面の急峻性が非常に重要になる。急峻な界面を得るためには界面の制御が必要であり、MOCVDの場合反応分子の吸着、分解の機構を解明し、界面との第1層の形成反応を制御しなければならない。 以上の観点から、我々はインジウム源であるトリエチルインジウム(TEI)のGaP(001)表面での分解、燐源であるトリメチル燐(TMP)のSi(111)-(7x7)表面への吸着を、前者では昇温脱離法(TPD)を後者では走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて調べ、以下の結果を得た。 (1)TEIは分解して約100度と320度でエチレンを発生させる。前者はTEIのエチル基がβ脱離分解で、後者は基板に吸着したエチル基の分解で生じると推定された。 (2)TEIの分解では約100、220、320度で水素を発生させる。100度及び320度ではエチレン生成に伴い、220度では基板から、それぞれ水素が発生したと推定された。(3)水素雰囲気下(実際のMOCVDの条件により近い)でTEIのTOD測定を行うと、100度と320度で発生するエチレンの強度比が逆転して320度のエチレン強度が増加する。この理由として水素が基板に吸着することにより、β脱離分解が阻害されたと推定された。(4)ほとんどがTMP分子はSi(111)-(7x7)表面のセンターアドアトムに吸着するが、そのほかのサイトに吸着した分子でもセンターアドアトムサイトに移動する。この選択的な吸着はTMPに孤立電子対が存在し、一方センターアドアトムには非占有電子密度が相対的に高いことから起こると考えられる。
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