研究概要 |
赤外分光用のクライオスタットを80-400Kの温度範囲で測定できるように改良した。KDPの相転移(148K)に伴う赤外スペクトル変化を観測し、試料温度の正確な検定を行った。 TCAAのアミノ基の関与する赤外スペクトル(N-H伸縮振動、NH2面外変角振動)の温度依存性の精密な測定より、一部のバンドの波数が、III相で顕著な温度依存性を示すとともに、転移点近傍で明瞭な連続的シフトを示すことが分かった。 トリブロモアセトアミド(TBAA)のIII相はTCAAと極めて類似した相転移を起こすが、赤外スペクトルの温度依存性はTCAAのものと全く異なることが分かった。 トリクロルアセトアミド(TCAA)の室温相(III)のX線結晶構造を再解析し、独立な2個のトリクロルメチル基の一方(B)は、C-C軸回りの小角回転で生じる2個所の安定位置を占めることを見いだした。粉末中性子回折の解析結果は、高温相ではこのトリクロルメチル基がその平均位置を占めることを示した。 2-クロロ-2,2-ジブロモ-アセトアミド(CDBAA),2-ブロモ-2,2-ジクロロ-アセトアミド(BDCAA)のTCAAに類似した相転移に伴う誘電性質の温度依存性の測定結果からBDCAAのIII-II転移は強誘電性転移であり、CDBAAのIII-II転移もその可能性のあることが判明した。 これまでの実験事実から、アミノ基の構造変化とトリクロルメチル基の2サイト配置の連動がTCAAの強誘電性転移の原因と考える転移機構が得られた。
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