研究概要 |
異なるアルキル鎖を持つaminoalkanethiol(AAT)を合成し,これらを用いて自己組織化単分子膜(SAM)の修飾電極を作成した。さらに,末端アミノ基の反応性を利用して,キノン骨格を持つ2,3-dichloro-1,4-naphtoquinone(NQ)と4,5-dihydro-4,5-dioxo-1H-pyrrolo[2,3-f]quinoline-2,7,9-tricarboxylic acid(PQQ)を電極表面に固定化した。 NQ固定化電極(NQ-AAT/Au)では,固定化されたNQの飽和吸着量はアミノエタンチオールを単分子膜とした場合で3.8×10^<-10>mol cm^<-2>であったが,アルキル鎖の増加とともに減少した。CVから求めたNQの酸化還元に対する電荷移動速度は,AATのアルキル鎖長の増加とともに指数関数的に減少した。減少の度合いから,Marcusモデルを用いてトンネル電流に対する障壁定数を求めたところ約0.36Å^<-1>となり,SAM膜内のアルキル鎖はかなり傾いていることが示唆された。 一方,PQQ固定化電極(PQQ-AAT/Au)では,測定した時間スケール内で,SAMのアルキル鎖長によらず常に可逆なCV挙動が観測された。このような早い電荷移動速度の原因については現時点では明らかでないが,PQQの生体内での挙動を考えると非常に興味のある現象であると思われる。 これらの結果から,SAM単分子膜の鎖長を変えることにより,電荷移動速度を制御できることが示された。
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