研究概要 |
本年度の主な成果は、以下の2点である。 i)非古典的チオフェン-ピラジン縮合環型多段階酸化還元系【Q】は本研究における中核分子システムである。このユニットの構築は、3,4-ジアミノチオフェン環より出発して行うが、一般にアミノ置換チオフェンは、各種反応条件下に不安定であり、このことが【Q】の合成上の最大の障害となっていた。この問題を抜本的に解決するため、アミノ基の保護・脱保護を活用した新規合成ルートを開発した。本法によれば、各種のヘテロ芳香環【Ar】と非古典的チオフェン-ピラジン縮合環【Q】を任意の順序・比率で配列したオリゴマーを得ることが新たに可能となり、当初計画で研究対象とした【Ar-Q-Ar】_n型の周期的な共重合体以外の広範な系についても合成・物性研究が可能となった。そのため、基本分子設計についての発展的再検討を、研究費で購入した分子設計支援計算システムを利用して進めている。 ii)未知のπ共役ポリマーのバンドギャップ値を精度よく予想することは、本研究で目的とする真性伝導高分子(Eg〜OeV)の分子設計を行う上で極めて重要といえる。しかし、理論計算のみでは高精度の予測を行うことは不可能であり、よって実験的評価法(オリゴマーの物性変化を補外することでポリマーの性質を予想)の適用を試みた。既に合成した低バンドギャップポリマーについて、対応するモデルオリゴマーを新たに合成し、その物性測定を行った結果、最も簡単な一次のフィッティング関数で補外した場合でもポリマーのエネルギーギャップを0.1〜0.2eVの誤差で予測できることが分かった。これにより、真性伝導高分子系の高率的な構造スクリーニングが可能になったとものと考えられる。
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