研究概要 |
1.最小バンドギャップ値を持つ新規ヘテロ環ポリマーの合成: 多段階酸化還元型・非古典的チオフェン[Q]を含む電解重合ポリマーにおいて、電気化学的バンドギャップが事実上OeV(有機π共役ポリマーの最小記録)となることを見いだした。また、その[Q]部位の酸化還元状態により、重合体の電子構造が大きく変化することも分かった。しかし、そのバンドギャップ値の精密な評価は、従来の脱ドープ法がもはや適用不可なため、行えなかった。そこで、対応するオリゴマー系列の物性変化を補外することでポリマーの性質を実験的に評価した結果、π共役主鎖に12個のヘテロ環ユニット(分子量千数百)を含む非古典的チオフェン高次オリゴマーにおいて、エネルギーギャップ値〜0.1eVが実現できることが分かった。 2.低バンドギャップ型オリゴマーの新規合成ルートの開発: 上記の結果を受け、可溶性の低バンドギャップ・非古典的チオフェン系高次オリゴマーの精密合成法の開発を行った。その結果、各種のヘテロ芳香環[Ar]と非古典的チオフェン環[Q]を任意の順序・比率で配列したオリゴマーを得るための合成ルートを見いだすことができた。新手法により、当初に研究対象とした[Ar-Q-Ar]_n型の系に加え、新たに[Ar-Q-Ar-Ar-Q-Ar],[Ar-Ar-Q-Ar-Ar],[Ar-Q-Q-Ar],[Ar-Ar'-Ar-Q-Ar-Ar'-Ar]型の低エネルギーギャップを高次オリゴマーを選択的に合成できた。 3.アルキル絶縁層を持つπ共役分子ワイヤーの開発: ナノスケール分子ワイヤー実現のためには、周囲の分子ワイヤーとの絶縁性の確保が重要である。この目的のための新たな試みとして、嵩高い置換基の立体構造を主鎖構造にフィットするよう設計した結果、絶縁性・可溶性・π共役主鎖の共平面性の強制的維持が同時に実現可能であることを実験的に明らかにした。
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