オルト-アリーレンジ亜鉛化合物の超音波法による合成を、亜鉛粉末と4-クロロ-1、2-ジヨードベンゼンあるいは4-メチル-1、2-ジヨードベンゼンとの反応について検討した.オルト-アリーレンジ亜鉛化合物の生成機構を考える上で重要な意味を持つと思われる、両者共に1、2-ジヨードベンゼンより低反応性である事実を明らかにした. オルト-アリーレンジ亜鉛化合物の合成原料として2-ヨードアリールトリフラート類が利用できることを見出した.即ち、この化合物の亜鉛粉末との超音波照射下の反応は目的物を高収率で与えた.2-ヨードアリールトリフラートはフェノール類を出発原料にして、そのオルト位沃素化、水酸基のトリフルオロメタンスルフォン酸エステル化によって容易に合成出来る.この新規合成ルートの確保により、オルト-アリーリンジ亜鉛化合物の有機合成試薬としての有用性が一段と増大した. オルト-アリーレンジ亜鉛化合物のカルボニル化合物との反応を検討中、アリール亜鉛化合物は3価クロム塩、アルデヒドと反応しアルデヒドへの求核付加反応の生成物であるアルコールの他にケトンを与えることを見出した.この3価クロム塩で触媒されるアリール亜鉛化合物とアルデヒドとの反応をトリメチルクロロシランの共存下行うことによりアルコールを、また、過剰のアルデヒド存在下行うことによりケトンをそれぞれ選択的に合成することに成功した.これにより、亜鉛とクロムの特性である高い化学選択性を活用した多官能基置換アルコールあるいは多官能基置換ケトンの選択合成法を開発した.
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