研究概要 |
鎖状モノテルペンアルコールであるcitronellolのG.cingulataによる変換では,主要変換生成物として,California red sacal(柑橘類の害虫)の性フェロモン(3-methyl-6-isopropenyl-9-decen-1-yl acetate)の合成前駆体として知られている3,7-dimethyl-1,6,7-octanetriolを高収率で得ることに成功し[Nat.Prod.Lett.,8,303(1996)],citronellalのG.cingulataによる変換では,アルデヒドの還元が速やかに進行し,citronellolを経由して,3,7-dimethyl-1,6,7-octanetriolが得られることを明らかにした[Nat.Prod.Lett.,9,53(1996)].同菌体を用いたcamphorquinoneの変換では,高立体選択的にcamphanediolが生成することを見出した[Phytochemistry,44,79(1997)].(-)-及び(+)-isopinocampheolの同菌体による変換では,(-)-体と(+)-体で主要変換生成物が異なり,(-)-体では4位へ水酸基が導入されたジオール体,(+)-体では7位へ水酸基が導入されたジオール体が主要変換生成物として得られることを見出し,さらに他の菌体を用いることによる変換様式の違いについても明らかにした[Phytochemistry,in press].セスキテルペンアルコールであるtrans-nerolidolにおいては,以前に報告したcis-nerolidolとは異なり,remote double bondへの水和反応が進行することを見出し,G.cingulataが基質の内部オレフィンの幾何異性を認識してることを明らかにした[J.Agric.Food Chem.,44,1543(1996)].さらに,昆虫(ハスモンヨトウの幼虫)を用いてモノテルペン炭酸水素であるα-terpineneの変換を試みたところ,7位のメチル基がカルボン酸にまで酸化されることを明らかにした[J.Agric.Food Chem.,44,2889(1996)].昆虫(ハスモンヨトウ)によるテルペノイドの生物変換経路を明らかにしたのは本研究が世界最初の例である.
|