タンパク-リガンド相互作用の電気化学検出について、主に卵白中のタンパクであるアビジンとそれに強く結合するビオチンを用いて基礎的研究を行い、以下に示すような研究成果を得ることができた。 1.電極活性種としてキノン骨格を有するドウノマイシン、色素の一つであるナイルブルー、そしてフェロセンを用いてビオチンをラベル化し、電極活性なリガンドを得ることができた。 2.これらのラベル化ビオチンの電極活性基は何れもアビジンと結合することにより、電極応答を著しく減少させた。電極活性種だけではこのようなアビジンの添加による電極応答の変化は見られないことから、この現象はアビジン-ビオチン間の特異的な結合に基づくものであることが確認できた。また、スペーサーの長さは、電極応答と結合の強さに若干の影響を与えることが判明した。 ドウノマイシンやナイルブルーのような色素でラベル化したリガンドは、色素の持つ電極への吸着性によって電極に濃縮でき、高感度なアッセイ法を開発することができた。一方、電極活性なフェロセンによってラベル化したリガンド(フェロセン化ビオチン)では、電極への吸着性を示さず、その電極応答は高感度ではなかった。そこで、陰イオン交換ポリマーの一つであるナフィオンで修飾した電極を用い、フェロセン部位を正電位で酸化してフェロセニウムイオンとすることによって、イオン交換的にフェロセン化ビオチンをナフィオン膜上に濃縮することにより高感度化を達成することができた。 4.ラベル化ビオチンとビオチンをアビジンに対して競争させることによってビオチンの検出も可能となり、遊離の状態と結合した状態のリガンドの分離操作を必要としない電気化学的アッセイ法の確立の可能性を示すことができた。 5.ビオチン化ヨウドアセチルとチオール基を有する化合物の反応がアビジンとの結合によって抑制されることを利用した新しいタイプの電気化学的アッセイ法を開発することができた。
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