スラブ光導波路(SOWG)を用いる可視内部全反射分光法用の測定システムを新たに開発した。用いたSOWGは、導波層に厚さ50μmの薄板石英ガラスを、またクラッドとして低屈折率の高分子のFEP膜を用い、スライドガラスによりそれらを保持したものである。石英ガラスの表面はトリメチルシラン、オクタデシルシランなどの各種シリル化剤で、還流法、あるいは自己集積法により化学修飾した。測定システムは以下の通りである。光源にはキセノンアークランプを用い、光ファイバーで平行光に直した後、結合プリズムにより導波路に導入した。導波光をもう一つの結合プリズムで取り出し、偏光板で直線偏光としたのち、CCDを用いたマルチチャンネル検出器で検出した。信号をパーソナルコンピューターに送り、時間分解偏光内部全反射スペクトルを得た(時間分解能、0.2s)。SOWG上にPTFEブロックでできたフローセルをつくり、試料溶液をシリンジによりフローセルに導入し、スペクトル変化を観測した。試料溶液の導入の状況をレーザー光をSOWG表面に対して垂直に導入し、溶液による吸収を測定することによりモニターした。本装置をメチレンブルー、ロ-ダミンB、ロ-ダミン6Gなどの色素のガラス表面への吸着挙動の検討に応用した。例として、ロ-ダミンBに関する結果をまとめると、本法によるロ-ダミンBの反射スペクトルと溶液試料の吸収スペクトルの形状はほぼ一致した。このことから、単量体と二量体の比は、溶液中とガラス表面に吸着した分子では、ほとんど変化しないことがわかった。また、偏光スペクトルを解析することにより、ロ-ダミンB分子(単量体)の長軸方向とSOWG表面に垂直な軸とのなす角の平均は、無修飾ガラス表面では50度、一方シリル化剤で修飾した表面では50〜57度であることがわかった。
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