プロピルアンモニウムイオンを化学的に結合したシリカゲルを用いて、液体クロマトグラフィーによってメタノール、アセトニトリル中でのポリエーテル表面錯形成を熱力学的に評価した。その結果、ポリエーテルの錯形成には対陰イオンが影響し、溶媒和が弱いものほど錯形成が強くなることが見出された。従来、これらの溶媒中、特にメタノール中ではポリエーテルの錯形成に対する陰イオンの役割は指摘されておらず、本研究で上記固体/液体界面を調べることで初めて見出されたものである。この機構を詳細に検討したところ、ポリエーテルの錯形成により、イオン対が解離し、その後再びポリエーテルをはさんでイオン対を生成することが分かった。このことは、イオン交換を用いて定量的に評価することができ、メタノールを用いたときには、陰イオンのイオン交換の分配からポリエーテルの錯形成を予測することができた。また、クラウンエーテルの環サイズを変化させて検討したところ、メタノール中ではクラウンエーテルの環が大きくなるほど、これをはさんだイオン対形成において、溶媒和の弱い陰イオンが選択的に取り込まれることが分かった。また、この選択性はエントロピー的に起きている。したがって、大きな環サイズのクラウンエーテルをはさんだ溶媒和の弱い陰イオンのイオン対の回りでは溶媒構造が強まっていることが示唆され、「疎メタノール的」ともいうべき現象が起きていることが明らかになった。この結果は、構造性の弱いアセトニトリルでは同様の現象が見られないことからも支持された。
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