本年度においては、酸性雨の成分の一つである硝酸イオンおよび、大気汚染物質の一つであるフッ化物イオンを対象とし、それらの連続フロー分析について検討した。硝酸イオンについては、ポリマー膜型とし、イオン交換体や可塑剤等の組成や濃度を最適化することにより、雨水分析に対して十分な感度(定量下限:1x10^<-6>M)を持つものを得た。雨水中の妨害イオンとして塩化物イオンと亜硝酸イオンが考えられるが、緩衝液中に硫酸銀を加えることで塩化物イオンの妨害を除いた。亜硝酸イオンに関しては雨水中の濃度は薄いので妨害を与えない。このセンサーを用いて雨水中の硝酸イオンの連続測定を行い、降雨期間中の硝酸イオン濃度を連続的に記録することに成功した。またフッ化物イオンに関しては、市販の固体模型のセンサーを用い、雨水中のフッ化物イオンの連続測定を試みた。当初、従来使用されてきた酢酸系の緩衝液(pH5.0-5.5)を用いたところ、雨水中の低濃度(10^<-7>Mから10^<-8>Mのオーダー)のフッ化物イオンの測定には感度が不足することがわかった。そこで、緩衝液組成の検討を行ない、グリシン/塩酸(pH2.8)が最適であることを見いだした。この緩衝液を用いて、雨水中の10^<-8>Mオーダーのフッ化物イオンの測定に成功した。更に、上記の硝酸イオン選択性膜を用いて、ゼロ電位差法のシステムを構成しその性能を調べたところ、残念ながら膜の電導性が不十分なため電位差測定の際の電位のばらつきが大きく、かえって精度が悪化することがわかった。今後は、感度を下げずに膜抵抗のみを下げるような膜組成の検討を行う予定である。
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