研究概要 |
本研究においては、まず雨水中のフッ化物イオンを対象とし、その連続フロー分析の際に用いる緩衝液組成について検討した結果、遊離フッ化物イオン測定用緩衝液として、pH2.8のグリシン緩衝液を提案した。(原、黄、Anal.Chim.Acta,印刷中)。次に雨水中の硝酸イオンを対象とし、PVC膜型硝酸イオン選択性電極を検出器とする連続フロー分析システムを構成し、添加する緩衝液の組成や雨水中の妨害イオン(塩化物イオンおよび亜硝酸イオン)の影響を詳細に検討した。(原、戸田、西澤、泉山、滋賀大学教育学部紀要)。さらに、この成果をふまえつつ、硝酸イオン選択性膜の組成の再検討を行い、4級アンモニウム硝酸塩を可塑剤(オルトニトロフェニルドデシルエーテル)に溶かし込んだものが感度の点で優れていることを見いだした。そこでこの膜を用いて、ゼロ電位差法に基づく連続フロー分析システムの開発を行った。本システムにおいては、硝酸イオン選択性膜を対称な2つのアクリルブロックの間に挟み込んだものをフローセルとし、膜の両側に同一の参照電極をおいて膜電位を測定する。膜の一方には、試料溶液を、他方には標準溶液を流し膜電位が、±1mV以内になるまで試料溶液の希釈率を変えることにより定量を行う。本システムはポンプの流速を操作することにより膜電位を制御する装置であるといえる。本システムの特徴は検量線を描くことなく試料を注入するだけで5-10分後にはその濃度が表示されることであり、定量の自動化、簡便化の手法として評価されるべきであると考えられる。定量範囲はポンプの流速により定まり、本システムでは約100倍であった。本システムの精度、確度等の性能を現在詳細に検討中である。
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