研究概要 |
(1) 雨水を汚染しているイオン種(汚染起源)のグループ分けのために,「雨水のための化学平衡を考慮した因子分析法」を開発し,その方法論の第1報をEnvironmental Sciences & Technology誌に発表した.現在,第2報として,個々の雨水中での染起起源の寄与の評価を数量的に行う解析手順を,同雑誌に投稿中である. (2) 統計的に正しい解析を行うためには,正しい化学分析データが必要である.本年度の雨水の化学分析データの検討の結果,水素イオン濃度をpHメータで測定されたpHから換算する方法は,清浄な雨水(共存イオン濃度が小さい)ほど,大きな誤差を与えることがわかった.これは,pHメータの参照電極との液絡部の起電力発生のためである.また,一部の雨水の場合,溶存する炭酸水素イオンの定量が必要であることがわかった.そこで,水素イオン濃度と炭酸水素イオン濃度を同時に正しく定量するための高精度ミクロ滴定装置をほぼ完成させた. (3) 1雨を1mmごと分別採水し,降水時の気圧,気温,降水量などの気象データを自動計測する装置を完成させた.単年度の測定結果から,低気圧の通過時に比べ,夏のにわか雨の時に,よりpHが低く,溶存イオンが多くなること;初期降雨から後続降雨になるにつれ雨水中の化学種濃度は減少すること;ただし,梅雨前線に伴う雨水では,溶存イオン濃度の系統的な時系列変化はなく,むしろ清浄でイオン濃度の絶対量は少ないが変動のランダムな雨を降らしていることが観察された. (4) 現在,兵庫教育大学周辺10km圏内の6箇所で採水した雨水の化学組成の地域差を(1)の方法を用いて解析し,汚染物質の起源との関連を検討した結果を論文として投稿準備中である. (5) また,兵庫県と秋田県の雨水の化学組成を解析した結果も論文として投稿準備中である.
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