研究概要 |
本研究では,新規な酵素固定化用担体にゾル-ゲル法で作製した五酸化バナジウム薄膜と導電性オスミウム含有ポリマー膜を用い,保持担体に電子アクセプター機能を付与することで,物理認識に伴う酵素の酸化還元情報を直接シグナルとして取り出す分子認識・酵素情報伝達型のバイオセンサーを開発することを目的として行った.その結果,次の新たな知見が得られた. (1)五酸化バナジウムゲルに酵素を包括した酵素センサーでは,充分な電気伝導性が得られず,分子ワイヤー機能を発現できなかった.しかし,オルトケイ酸メチルと酵素の混合溶液から,アルコールを使用しないゾル-ゲル法により作製した酵素センサーは,各基質に対して比較的高感度で迅速な応答(応答時間;20s)を与えた. (2)オスミウム錯体を結合した酸化還元ポリマー中に酵素を固定化した酵素センサーでは,分子ワイヤーとしての電子伝導性も充分あり,オスミウム錯体と酵素の活性部位との親和性も高いことから,分子ワイヤー原理に基づいたバイオセンサーを構築できた.その結果,FAD酵素(グルコース酸化酵素,乳酸酸化酵素,グルタミン酸酸化酵素など)とPQQ酵素(フルクトース脱水素酵素,ガラクトース酸化酵素など)はオスミウムポリマーを電子受容体として,ヘミンを活性部位に持つ各種のペルオキシダーゼの場合にはオスミウムポリマーを電子供与体として酵素と電極間で電子移動が起こることが明らかになった.いずれの場合も,各基質に対して良好な応答を与えるセンサーが得られた.
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