研究概要 |
カテコールおよびその誘導体は過酸化水素により酸化されるが,超微量のマンガン(Mn)が共存するとその反応は著しく加速される.この現象を利用するMnの接触分析法を開発し,飲料水中のMn定量に応用した.検出はカテコールの酸化物とエチレンジアミン(en)をカップリングさせ,生成したキノキサリン誘導体の発蛍光性を利用し,蛍光検出法によりなされた.enはカップリング成分としての役割以外にアクチベータとしても作用し,更にマスキング剤としても有効であった.このenの効果により,本研究は検出限界3ppt,定量下限10ppt,妨害イオンがほとんどないという高感度,高選択性の優れた定量法を開発することができた.またカテコール誘導体であるジヒドロキシナフタレン(DHN)によるMn定量では分解速度を利用する方法で吸光光度法による定量を試みた.この方法でも吸光法ながら検出限界8pptである高感度分析法が確立できた.このようにカテコールとその誘導体を利用する分析法は高感度であるが,その反応機構については不明な点が多かった.そこでカテコール誘導体からキノキサリン誘導体に変化する反応機構について検討した.従来カテコールは酸化されオルトベンゾキノンが生成するとされているが,それ以前にカテコール-Mn-en-過酸化水素の4元錯体が中間体として生成し,その後キノキサリン誘導体に変化することが明らかにされた.この反応途中ではヒドロキシルラジカルが生成する.従ってこのラジカルを利用し,アゾ化合物の分解反応を検討した.使用した試薬はアゾ基とカテコール基を有するスチルバゾである.このスチルバゾの分解反応を利用する方法によっても高感度マンガンの定量法が確立できた.
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