研究概要 |
種分化の過程において重要な役割をはたしている生殖的隔離機構、なかでも性隔離を理解するために、配偶行動に関与する遺伝子のクローニングを目指している。現在までに約4000の独立な染色体上の位置にP因子を転移させた系統を作製し、これらから不妊を一次指標にした方法と、近縁種であるオナジショウジョウバエとの交尾率を指標にしたスクリーニングで突然変異系統を選択している。不妊系統の配偶行動を解析した結果、数系統は配偶行動の異常を示した。そのなかの1系統は雌が雄様の配偶行動をしめし、この突然変異はin situ hybritizationや、allelism testの結果からtrannsformer-2と呼ばれる重要な性決定遺伝子の対立遺伝子でありtra2^q。このように、不妊を一次指標として配偶行動突然変異を選ぶ戦略は有効だと考えられた。 他の1系統は、雄が配偶行動を示さず背板の脱色がみられ、第2染色体の22DにP因子が挿入しており、近傍には同様の表現型をしめす遺伝子が知られていなかったためfreezeとなづけた。この遺伝子のゲノム領域をクローニングし、転写産物を解析した。詳細な遺伝学的、分子生物学的な解析により、これはNusslein-Volhartらによって以前同定され、特徴づけされていなかった致死遺伝子であるanterior open (aop)の対立遺伝子であることが明らかになった。他のグループも眼の異常に着目してこの遺伝子の対立遺伝子を単離しており(yan, pok)この遺伝子の様々な生物活性への関与を示唆している。 オナジショウジョウバエとの交尾率を指標にした配偶行動突然変異は1次スクリーニングはほぼ終了しており、これで取れてきた突然変異をより詳細に解析しつつある。
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