本研究は、マウス第11染色体のp53遺伝子座にneo-tkカセットを標的導入したマウス胚幹(ES)細胞を用いて、染色体の相同組換えに関与する一連の現象を分子レベルにおきて解析できる系の確立と利用を目指している。野性型アリル(W)とneo-tkアリル(T)をもつヘテロ接合体(W/T)のES細胞において2つのアリル間で両方向に、しかも再現性をよく組換え修復が生じることはすでに平成6年度に発表した。この組換え修復の作業仮設として、〔1〕比較的限られた領域での除去修復タイプのジーンコンバージョン、〔2〕相同染色体のDNA複製後の染色分体(sister chromatids)間の相同組換え、〔3〕単一親由来の二染色体性(uniparental disomy)にみられるような染色体不分離によるホモ接合化を提唱し、実験的に検証する。 平成7年度は、申請者が九州大学から東海大学に転出したため、まず、その移動に伴う実験系の設置を行った。大幅な改修をすでに完了し、移動および備品の設置もほぼ整った。この間、材料となるES細胞株は、九州大学生体防御医学研究所の勝木元也教授のご協力のもと、現在、G418およびGANCによる選択を始める段階である。また、SSLPマーカーに関しては、国立遺伝学研究所の城石俊彦教授に多大な援助を頂き112対入手した。コントロールとなるCBA近交系マウス、C57BL/6近交系マウスおよびTT2ES細胞株のゲノムDNAは、すでに大量に抽出した精製した。予備実験において調べたSSLPマーカー8個のうち丁度半分に、CBA近交系マウスとC57BL/6近交系マウスの間の多型が確認された。入手したSSLPプライマー対112個のうち、約50対は、多型の検出できるマーカーと推定される。検定対象となる耐性細胞株が得られ次第、多型の確認できたSSLPマーカーで、順次、解析を始める。
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