本研究ではマウス体細胞における特定遺伝子座近傍の相同組換えを鋭敏に検出し、その領域を分子レベルで解析する系を確立することを第一の目的とした。まずneo-tkカセットを利用した系でマウスp53遺伝子座にHSV-tkを導入したアリルTを確立し、その野生型とのヘテロ接合体W/TをGANC選択でW/Wおよび高濃度G418でT/Tホモ接合体の組換え修復体を得る系を用いた。これをC57BL/6とCBAのF1細胞株であるTT2において確立することにより、組換え修復を分子レベルで解析できる基礎系を確立した。実際にTT2株においては調べた多型マーカーのうちやく半数が利用可能であることを示した。さらに系の精度を高めるために、Eco-gpt遺伝子の有効性も検討し、HSV-tk遺伝子より優れていることを確認した。Eco-gptをマーカーとした場合、ヘテロ接合体の6-tg感受性株を、組換え修復によって6-tg耐性株となったホモ接合体を単離するわけであるが、この場合はHSV-tkとGANCの系に見られた感受性株の残骸が残らず、短時間で多くの耐性株を正確かつ効率良く得ることができた。このEco-gptを利用するために必要であった6-tg耐性となったES細胞株CCHの樹立、CCH株のp53遺伝子座へのneo-gptカセットの導入にも成功した。この成果に基づき、今後、片方のアリルにはEco-gptをneo遺伝子とのカセットで、また、もう片方にはHSV-tkをピュアロマイシン耐性遺伝子とのカセットで導入した細胞を構築することができ、それぞれ6-tg、GANC選択で、gptからtkへ、また、tkからgptへと両方向への相同組換えによる遺伝子修復を分子レベルにおいて解析できる可能性を開いた。
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