研究課題/領域番号 |
07640826
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研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
榊原 祥公 国立予防衛生研究所, 細胞化学部, 室長 (10072927)
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研究分担者 |
山河 芳夫 国立予防衛生研究所, 細胞化学部, 室長 (50100102)
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キーワード | 大腸菌 / 複製開始 / dnaR / dnaA / rpoB / rpe / リブロース燐酸エピメラーゼ / リボース燐酸キナーゼ |
研究概要 |
大腸菌染色体の複製開始に温度感受性を示すdnaR変異株はRNAポリメラーゼのベータサブユニットをコードするrpoB遺伝子に起きた特定のリファンピシン(Rif)耐性変異によって温度非感受性となる。その変異のいくつかは特定のdnaA変異による温度感受性をも抑える。rpoB変異によるdnaAとdnaR変異の抑圧はそのrpoB変異に応じて機能するdnaAとdnaR産物を必要とする。従って、dnaR産物はdnaA産物と協同して複製開始に必要な転写に関与していると考えられる。dnaR変異株は通常の細胞では複製の開始を阻害するRifの存在下に温度耐性のDNA合成を示す。このDNA合成は、dnaA機能依存的にoriCから開始し、薬剤存在下正常時と同じ様式で複製の開始が誘発される。RifはRNAポリメラーゼに結合し、その転写活性を奪うが、転写中にRifと結合した酵素は終結すべき点を越えて転写を継続する。従って、dnaR変異株におけるRifによる誘発複製はRifの結合によって転写を継続し得る特定なRNAポリメラーゼ分子による、おそらくは、複製起点あるいはその近傍でのread-through転写に起因すると考えられる。dnaR変異株の自然復帰変異の解析から、複製開始におけるdnaR機能に関わる新しい遺伝子として、リブロース-5-燐酸エピメラーゼをコードする遺伝子rpeを同定した。この遺伝子は通常の条件下での細胞増殖には必須でない。rpe遺伝子の不活性化はdnaR変異株を温度非感受性とする。その一方、rpe機能の欠如は特定な変異をもつdnaAとdnaR産物の機能を喪失あるいは減少させる。従って、rpe産物は複製開始においてdnaR産物のみならずdnaA産物とも相関して働く。rpe産物はペントース燐酸代謝においてリボース-5-燐酸キナーゼ(PRPP合成酵素)遺伝子prsの産物であるdnaRと極めて近い反応を担っている。糖代謝に関わるこれらの遺伝子がどのような機構で複製開始の制御に関与しているのか、現在解析中である。
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