研究概要 |
茨城県北部の植生は暖温帯の常緑広葉樹林から冷温帯の落葉広葉樹林への移行域に位置している。冷暖温帯移行域にはクリ,コナラ,シデ類,カエデ類等の落葉広葉樹林が成立する。移行域の二次林の主な構成種であるコナラ,アカシデ,クリの成立機構に関して,稚樹及び樹冠部でのシュート動態及び生理生態的特性より,以下の点が明らかになった。 (1)3種の樹冠部上層及び伐採跡地の稚樹の最大光合成速度は8〜10,樹冠部下層は3〜4μmolCO_2m^<-2>s^<-2>を示した。上層及び稚樹の最大光合成速度はクリ,コナラ,アカシデの順に低下した。 (2)水利用効率は下層は15〜30,上層は2μmolCO_2/mmolH_2Oで,下層は上層の8〜10倍の高い水利用効率を示した。コナラとクリの上層の葉の光合成は日中低下がみられた。一方,アカシデの上層の葉の光合成は日中低下がみられなかった。 (3)シュート伸長はコナラとクリは稚樹,成木とも1次シュートが伸長後,2次シュートを形成した。一方,アカシデは稚樹では1次シュートのみを長期間伸長させ,高木では他の2種と同様に高次のシュートを形成した。 (4)アカシデはコナラやクリよりも葉の寿命,個葉の面積,比葉重,単位長さ当たりの茎重等が有意に小さかった。アカシデは単位葉面積あたりの茎長はコナラの3倍,クリの5倍であった。アカシデが小さな葉面積で効率の高い伸長を行っていた。 (5)以上の結果からアカシデはコナラやクリに比べて,シュート動態,シュート構造ともに伸長生長により重点を置く生態的特性を有していると考えられた。これらのシュート伸長様式・構造及び葉の動態が,小さな種子重を有するアカシデがコナラ,クリと同所的に林冠木を形成するのに大きく寄与していると推察された。
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