生物の集団サイズが一時的に著しく縮小することを個体群ボトルネックという。ボトルネックを経た集団は、その後個体数を回復しても起源集団とは異なる遺伝構造をもつようになる。ボトルネックの効果に関する知見は絶滅危惧種や侵入種の管理の計画を立てるうえで必須である。ボトルネックの集団遺伝学的な効果は、開花・結実段階でのAlee効果(世代内効果)を介して生じると考えられる。 本研究では他殖性植物とされるネズミムギを材料として、圃場実験によって個体群ボトルネックの世代内効果を検討した。植物の繁殖の成功は、他個体の花粉を受け取る可能性、「受粉機会」のほか、開花時期を通じて大きく変化する「繁殖に投入可能な資源量」によって大きな影響をうける。また、開花期の途中で死亡した場合の種子生産の評価も必要である。そこで、本研究では、集団サイズ(1-8個体)と穂の開花時期が種子繁殖パラメーターに及ぼす影響を分析し、個体の時期別の生産種子数と種子バイオマスを求めることにより集団サイズが種子生産に及ぼす効果を測定した。その結果、集団サイズが小さい場合には開花期全般を通じて種子生産量が低下するなど、ボトルネックは世代内の繁殖にもマイナスの影響を及ぼすことが示された。
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