研究概要 |
本年度は、まず2種類の宿主(ジョロウグモ、オオジョロウグモ)と2種類の寄生者(アカイソウロウグモ、シロカネイソウロウグモ)が生息している沖縄県名護城において調査ルートを設定した。宿主の網を固体識別し、宿主のサイズ・網形質、寄生者の種別固体数、体長、網上での位置を記録し、その日変化を調べた。結果は以下の通りである。 1.宿主の網上におけるイソウロウグモの固体数を規定する要因を明らかにするために、宿主の体長、網面積、網上の餌数を独立変数にして、重回帰分析を行った。その結果、宿主の体長と強い正の相関が見られた。 2.網が縮小あるいは破れた宿主上では、そうでないものに比べて、イソウロウグモの固体数が日を追って急激に減少した。これは、餌がとれなくなったための移出によるものと思われる。 3.小型の宿主の網上では、より大型の寄生者が網の中心に近い位置を占める傾向が認められた。これは、小型の網上では、寄生者間の相互作用が強いことを示唆している。 4.大型の宿主の網上では、大型の寄生者が存在することがわかった。これは、大型の宿主の網上で餌条件がよいことを示唆している。 5.寄生者の餌盗みの方法は、以下の3種類が認められた。(1)宿主が捕獲しない網にかかった小型餌を盗む、(2)宿主が捕食している大型餌を宿主とともに摂食する、(3)宿主が捕食していた餌を、宿主の隙をねらって盗みとる。このうち、(1),(2)は寄生者の種やサイズにかかわらずみられたが、(3)は大型の寄生者でのみ観察された。これは、寄生者間の相互作用によるものなのか、それともサイズ特異的なものなのかは不明である。
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