捕食者の餌選好、被食者の天敵回避努力を例に、表現型の適応的変化、進化的変化を記述する数理模型を提唱した。その結果、以下のことが明らかになった。 (1)被食者がすべての天敵に有効な回避行動を持つ場合、食物網の構造は単純になることが予測される。それに対して、被食者が各天敵に別々の回避行動をとる場合、食物網の構造は複雑になると予想される。この理論的結果は、京都大学の堀道雄教授がTanganyika湖で見いだした鱗食魚の例を説明する。すなわち、複数種の鱗食魚は異なる方法で被食者を襲い、他の捕食者に比べて多くの被食種を共有している。 (2)捕食者が別種の被食者を別々に探す場合、食物網の構造は簡単になる。この場合、2種の被食者は捕食者を通じて双利関係(相手が増えると自分が安全になる)にある。これをapparent mutualismと名付けた。 (3)非対称競争の関係にある2種の生物の場合、適応進化は必ずしもその種自身の存続の機会を増やすわけではなく、自ら絶滅の危険を招くように進化する恐れがある。
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