本研究では、水界プランクトン生物群集内の食物連鎖を通じた物質代謝にかかわる生態学的転換効率の実験的測定を行った。対象の微生物は湖沼や河川から分離して培養・飼育に成功した。また、細菌の栄養にかかわる溶存態有機物の分析とその分解に対する紫外線などの環境条件の影響を明らかにした。 1.諏訪湖や琵琶湖などの各種湖沼の水中溶存態有機炭素の測定法を確立し(妨害物質の除去・ブランクの評価などを工夫)、各深度での濃度分布を明らかにした。溶存態有機炭素は水中での紫外線の減衰と関連するので、消散計数とのの相関を求めた。 2.湖沼中の原生動物の細胞数と現存量の季節変化を明らかにした。また、同時に原生動物によるバクテリアの補食量と、逆に甲穀類による原生動物の被食量を推定した。原生動物活動と食物連鎖過程が湖沼の有機物代謝にしめる意義を明らかにした。 3.湖沼の微生物プランクトン各種の培養に取り組み、バクテリア数種、原生動物、輪虫、ミジンコ類の単離と培養・飼育に成功した。これは今後の研究に安定して利用できる。 4.植物プランクトンの生産した溶存有機物(細胞外排出物)からバクテリアの菌体生産の効率が40〜48%であることを実証した。 5.水界の富栄養化に関連する窒素と微生物代謝について問題点を整理し総括した。
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