研究概要 |
平成7年度は、主として、メグロのさえずりが生息数推定に使えるかどうかについて検討を加えた。なおこの調査を実施するにあたっては、現在母島で鳥類調査を行っている樋口・川上両氏の協力を得た。 樋口・川上両氏によって個体マークが施され、また各個体の行動圏(なわばり)がある程度判明している母島御嶽神社周辺の森林に生息する個体群を対象として調査を行った。ここにどの程度の数のオスが生息するかは、既に樋口・川上両氏によって既にほぼ明らかにされていたが、この調査の実施時点においては調査者(研究代表者)はその結果について事前に何等の情報も得ていない。 調査は、天候が晴れもしくは雲りの早期に行った。メグロのオスが活発にさえずるのは早朝の15〜20分程度である(Suzuki,1993)。そこで、メグロの最初のさえずり(午前4時5分前後)が聞かれてから約5分後から、調査地内のあらかじめ決められたコースを約15分かけて早足で移動しながら、さえずりとさえずり固体の位置を地図上に記録した。不活動な薄暗い時間帯であるのと、調査者の移動速度が早いので、各さえずり地点には別固体の1羽のオスがいるとして、さえずり個体記録数を調査地内のオスの数(少なくともなわばりをもち、さえずる個体)と判定した。これを別の日に4回行ったところ、4回ともほとんど同じ結果が得られた。これらの結果からすると、調査地内には約10羽のメグロのオスが存在し、調査時期に平行して行われた他の調査からもほぼ同数のなわばりが存在すると結論された。この数はマーク個体の調査によって明らかにされた同調査地の生息数とほぼ一致し(調査場所の多少の不一致や調査時期の違いで結果は少し異なっていた)、従来難しいとされていたメグロの生息数評価が極めて高い精度で行い得ることが判明した。
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