研究概要 |
人為的な生息地の破壊により,野性生物の生息地は細分化されパッチ状になっている。本研究では,パッチの質や空間配置が捕食者-被食者系の存続可能性に及ぼす影響を数理モデルを用いて解析した。ロジスティック成長し捕食者を共有する2種の被食者を考え,捕食者と被食者の間にロトカーボルテラ型の相互作用を仮定する。被食者間の競争は無視する。パッチ間を移動できるのは動物だけで,パッチ間移動は拡散型であると仮定する。パッチの質を記述するパラメータとして被食者の環境収容力を用いる。被食者の環境収容力が大きい好適なパッチ(source)では捕食者は存続可能であるが,不適なパッチ(sink)では他のパッチからの移入がなければ捕食者は滅びる。複数の被食者が捕食者を共有する場合は,Holt (1977)の見かけの競争により被食者の固体群密度の減少や絶滅が起こるが,被食者の環境収容力が大きいほどこの効果は強い。環境収容力が大きく,2種の被食者のうちの1種が滅びるパッチをsuper-abundant sourceと呼ぶことにする。一つのsourceまたはsuper-abundant sourceと複数のsinkがある環境で,捕食者と被食者の存続条件を調べた。パッチの空間配置は,(A)中央の好適なパッチを不適なパッチが取り巻く中心型と,(B)好適なパッチを端に不適なパッチが直線的につながる直線型の二つを考えた。不適なパッチの数とパッチの空間配置が個体群の存続に及ぼす影響は,捕食者と被食者で逆であることが明らかになった。捕食者は,パッチ配置が直線型でsinkが少ないほど存続しやすいが,見かけの競争に弱い被食者はパッチ配置が中心型でsinkが多いほど存続しやすい。上記の効果は,捕食者の移動の活発さにも依存し,捕食者の移動率が小さいほど不適なパッチ数よりもパッチの空間配置の影響の方が大きいことが明らかになった。
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