この三年問に本課題で得られた研究成果は以下の三点である。 (1)生理生態学的研究においてこれまで多用されてきた葉形質の指標である“Specific Leaf Area"の内容を理論的に検討し、これが“Rib-part Index"、“Specific Mesophy11-part Weight"、“Specific Cell Volume"、“Specific Air-space Volume"、“Dry-matter Content of Mesophyll-part"、“Air-space Ratio of Mesophyll-part"の六つの葉形質パラメータで構成されていること、また、これらの葉形質パラメータを用いることにより葉形質から得られる生理生態的情報が量質ともに格段に改善されることを示した。この結果は、「Some leaf parameters composing specific leaf weight and their seasonal changes in Aucuba japonica growing in evergreen and deciduous forests」の表題で発表準備中である。 (2)丹沢山塊のブナ個体群の衰退木と健全木の形態的形質および光合成に関わる諸形質の季節的動態調査を行い、葉の形態的形質と機能的形質の安定性と変異性の検討・考察のための資料を充実した。この結果の一部は「丹沢檜洞丸におけるブナ衰退木の個葉光合成と葉形質」の表題で発表した。 (3)暖温帯都市二次林の光条件の異なる二つの林分の林床木本植物群集の形態的・生理的葉形質を盛夏と初秋に調査し、植物群集の生理生態学的構造の把握を試みた。形態的形質では“葉の厚さ"、“SLW"、“SPAD値"などで群集の特性パターンが捉えられる可能性が示唆された。また、生理的な形質である“葉コンダクタンス"データからは群集内の多様性と総体としての特性をより示唆するパターンが得られた。この結果の主要部分は研究成果報告書に「暖温帯域都市二次林林床木本植物群集構成種の個葉形質とその多様性」として報告した。
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