1)種子の生産・散布の量と空間分布 55m×100mの範囲内に108個の種子トラップを設置し、7月から11月にかけて月1回ないし2回(9月以降)、計8回、種子およびリターのサンプルを回収した。また1haの調査区内の結実個体について、空間分布と個体あたりの結実量を調べた。今年度の成果としては種子トラップの設置を終了し、次年度以降の調査の見通しを得たこと、及び結実に関する初年度のデータを得たことである。データは現在も解析中であるが、種子生産の集中性はオオカメノキとタムシバで強くギャップに集中する傾向のあること、オオバクロモジでは集中性はやや弱く閉鎖林冠下でも種子生産を行うことが可能であることが等明かとなった。しかし、種子生産は年変動の大きな現象であるので、次年度以降の調査により、上記の傾向をさらに確認したい。 2)個体群のサイズ構造と空間構造 種子トラップを設置したのと同一のエリア内で、4種の低木の個体群のサイズ構造と空間構造を調べた。3000以上の個体のマ-キングと初年度の測定を終了し、次年度以降のモニタリング調査の体制が整った。初年度のデータは現在、解析中である。サイズ構造はいずれも逆J型となり大差ないが、空間分布には大きな違いがあった。すなわち集中性はノリウツギで最も強く、オオバクロモジは最も弱く、オオカメノキとタムシバはその中間であった。原因としては、種子由来の個体による個体群の更新頻度および、萌芽や伏条の形態や様式の違いが想定された。この点について、次年度以降のモニタリング調査によって明らかにしていく予定である。
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