1)種子の生産・散布の量と空間分布 昨年度に引き続き、55m×100mの範囲内に108個の種子トラップを設置し、5月から11月にかけて月1回ないし2回(9月以降)、計9回、種子およびリターのサンプルを回収した。また昨年度の11月より、調査区内にトラップを残置したことにより、冬期に散布される種子についてもデータを得た。さらに昨年度同様、結実個体の空間分布と個体あたりの結実量を調べた。データは現在も解析中であるが、今年度はオオバクロモジとオオカメノキでは多くの開花・結実が見られたが、タムシバとノリウツギは全く見られず、これら2種では大きな年変動があることが明らかとなった。 2)個体群のサイズ構造と空間構造 種子トラップを設置したのと同一のエリア内で、昨年度マ-キングした3000以上の個体(地上幹を単位とする)について、生死を確認しサイズを再測定するとともに、新たに出現した個体についてもマ-キングし、サイズを測定した。これによって、低木性樹種のデモグラフィーに関する初めての本格的なデータが得られた。各樹種とも小さなサイズクラスの個体まで含め、かなりの死亡率と補充率を示し、個体群のサイズ構造が動的な状態で維持されていることが明らかとなった。また、死亡要因として、ウサギ等の動物による被食がかなり重要であることも解ってきた。各種のデモグラフィックパラメーターの違いに関し、萌芽や伏条の形態や様式の違いがおおきく関わっていると予想された。
|