本研究の目的はクロロフィルbからクロロフィルaへの転換というクロロフィルの新しい代謝経路の存在を示すとともに、この代謝系によるクロロフィルと蛋白質とのアセンブリー(クロロフィル蛋白質複合体の形成)の機構を明らかにし、その生理的な役割を検討することである。 クロロフィルと蛋白質との会合 単離葉緑体においてクロロフィルbからクロロフィルaへの転換とクロロフィルと蛋白質の会合を調べるため14C-クロロフィライドと葉緑体をインキュベートした後、各クロロフィル蛋白質複合体を分離し取り込まれた14C-クロロフィル類を分析した。クロロフィルaはP700クロロフィルa-蛋白質複合体に、クロロフィルbは集光性クロロフィルa/b-蛋白質複合体に多く取り込まれ、in vivoでの会合を反映していた。しかし、クロロフィルbからクロロフィルaへの中間体である7-ハイドロキシメチルクロロフィルはどの蛋白質にも取り込まれなかった。またクロロフィルbから合成されたクロロフィルaもアポ蛋白質と会合した。これらの結果は集光性クロロフィルa/b蛋白質複合体のクロロフィルbがチラコイド膜でクロロフィルaに転換され反応中心複合体の形成に利用されることを示している。 以上の結果より、クロロフィルbからクロロフィルaへの転換は光化学系の形成や光適応時におけるそれらの再構築に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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