研究概要 |
イネ科植物であるオオムギ芽生え細胞壁から、複数のグルカナーゼを遊離した。分画精製の結果、エキソグルカナーゼ2種((1)、(2))、エンドグルカナーゼ3種((3)、(4)、(5))を得た。基質特異性実験から、(1)〜(5)を次のように同定した。(1) :エキソ-1,3-グルカナーゼ(3.2.1.58・66kD)、(2) :エキソ-1,3-グルカナーゼ(3.2.1.58・68kD)、(3) :エンド-1,3-グルカナーゼ(3.2.1.39・31kD)、(4) :エンド-1,3-グルカナーゼ(3.2.1.39・31kD)、(5) :エンド-1,3 : 1,4-グルカナーゼ(3.2.1.73・31kD)、(括弧内は酵素番号とSDS-PAGEによる分子量)。5つのうち、1,3 : 1,4-グルカン分解活性をもつ(1)、(2)、(5)に注目した。(1)は(2)より、1,3 : 1,4-グルカン分解活性が強く、また、(1)の活性量は細胞壁由来のグルカナーゼ活性量の大半(60%)を占めていた((2)は3%程度)。(5)は、産物解析より、1,3 : 1,4-グルカンを内部から分解し、急激な分子量低下を引き起こすことを明らかにした。オオムギ芽生えの1,3 : 1,4-グルカン分解は、主に(1)と(5)によることが示唆された。(1)と(5)のN末アミノ酸配列を決定し、イネゲノムcDNAのホモログの検索も行った。(1)(30配列決定)は、イネゲノムcDNA、D40610が酷似していた。(5)(5配列決定)は、イネ芽生え発現型エンド-1,3 : 1,4-グルカナーゼホモログ(D39445)と一致した。このうち、D39445(インサート: 1.8kbp)をシークエンスし、配列の最初400bp、最後400bpを決定した。 本プロジェクトでは、イネ科植物の伸長成長の調節因子である2つのグルカナーゼを同定した結果、ゲノムの遺伝子上流域配列と伸長成長支配因子の関連についての基盤的知見が得られた。
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