ras間連の小分子GTP結合蛋白質は、様々な細胞機能の制御に関係している。 例えば、増殖、分化、細胞骨格の編成、膜輸送などである。このような遺伝子が植物で同定、分離されているが、その発現制御や蛋白質の機能はほとんど分っていない。小分子GTP結合蛋白質をコードしている小麦の遺伝子wgp7は二酸化硫黄や二酸化窒素処理により転写レベルが上がる事が分かった。過去3年間の研究により以下のような結果を得た。 1、wgp7の転写物の蓄積は、二酸化硫黄や二酸化窒素のみならず、活性酸素ストレスを生じる条件、例えば除草剤であるメチルビロジェン(パラコート)やカタラーゼの阻害剤、紫外線や寒さによっても誘発された。 2、CaMV35Sプロモーター下流にwgp7をセンス方向につないでタバコに導入した(T2及びT3世代を得た)。転写レベル、蛋白合成の程度に依存して、様々な形態をもった植物が得られた。その中には極度に矮性になったものがあった。 しかしながら幾つかの活性酸素ストレスに対する反応性には差がなかった。 3、wgp7のプロモーター領域をクローニングし、塩基配列をきめた。現在ストレスに反応するシス領域をきめつつある。 4、インビトロで作成したwgp7蛋白はGTPと結合することが分かった。完全長と多様性にとんだカルボキシル末端を用いて抗体を作成した。得られた抗体を用いてwgp7蛋白の存在場所を調べたところ、ミクロソーム分画に存在した このことから当蛋白は膜に存在することが示唆される。小麦においてはwgp7蛋白は活性酸素ストレスで速やかに誘発される。細胞内の蛋白の存在場所を検討中である。 wgp7蛋白を用いて、その蛋白と総合作用する蛋白の遺伝子を分離した。この蛋白は、GDPに結合した状態でwgp7蛋白と特異的且つ可逆的に結合することが明らかになった。この蛋白の欠失変異の研究からアミノ末端から198アミノ酸残基がGTP結合蛋白との結合に十分であることが分かった。
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