研究概要 |
イネの登熟初期の種子にはWxタンパク質に対するポリクローナル抗体と反応するWxタンパク質類似のバンドが認められる.このバンドはwx変異体を用いた場合でも検出されることから,Wxタンパク質に相同なアミノ酸配列を含む,wx座とは異なる遺伝子座に支配されているタンパク質(WRP1 ; Wx Protein-Related Protein 1)であると考えられる.7年度はこのWRP1の性質を検討するとともに,これをコードするcDNAの探索を行った. wx変異体を用いたイムノブロット解析により,WRP1について次のようなことが明らかとなった.(1)種子の中の果皮で特異的に発現が検出され,これは免疫組織化学的な解析によっても確認された.(2)種子の発生の初期に強く発現し,その後減少する.この時期は種子のうちの果皮が良く発達し,強い緑色を呈している(すなわち光合成が盛んに行われている)時期に相当する.これらの結果から,WRP1は果皮組織に特異的に発現し,同化デンプンの合成に関与していることが示唆された.そこで,Wx遺伝子の変異体の発生初期の種子より得たmRNAよりcDNAライブラリーを作製し,イムノスクリーニング法でWRP1に対するcDNAクローンの探索を行った.その結果,いくつかの候補クローンを得た.このうちの1クローンは,果皮で強く発現し,しかも時期的パターンはWRP1のパターンと類似していた.
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