研究概要 |
多核緑藻モツレグサの核分裂・細胞質分裂について核の挙動と細胞骨格(微小管・マイクロフィラメント)の観点から詳細な調査を行った。モツレグサでは将来の細胞分裂予定域に多数の核が集合し、同時に表層微小管の配向が大きく変化し核のリングと共に微小管のバンドが形成される。核分裂はこの核のリング部分から開始され、他の領域の核に伝搬していく典型的なmitotic waveが観察された。また微小管のバンドは核分裂期においてもそのまま残り、細胞質分裂の際に細胞膜のくびれ込みに大きな働きを有する。これらの結果は現在学術雑誌に投稿中である(Phycological Research,Aruga and Motomura)。 次に、多核緑藻モツレグサにおける核分裂、mitotic wave、微小管骨格の劇的変化について分子レベルで解析するために、真核細胞における細胞周期制御のキ-となるcdc2遺伝子の解析を進めた。cdc2遺伝子は真核細胞においては種を越えてホモロジーが高いことが知られていることから、適切なプライマーを用いPCRによる遺伝子増幅を試みた。結果として、2種類のcdc2様の遺伝子を単離し、PCR増幅部分の塩基配列を決定した。モツレグサのcdc2様遺伝子はアミノ酸配列において“PSTAIR"部分の配列が他の真核細胞と若干異なるものの、50%前後の相同性を示した。 モツレグサ以外の多核緑藻ハネモ、マガタマモについては、BrdU取り込み実験等により細胞周期の形態学的解析は概ね終了したが、興味深いことに今回用いたプライマーではPCRによるcdc2遺伝子増幅はできなかった。
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