ミドリゾウリムシのさまざまな培養時期(対数増殖期、定常期初期、定常期後期)における、生殖核(小核)と栄養核(大核)の超薄切片を用いた電子顕微鏡観察による比較を行い、大核と小核の形態学的な特徴を解析した。大核は核内一杯に散在する直径約100〜150nmの球状〜棒状のクロマンボディと直径400〜550nmの核小体が主な構造体である。クロマチンボディからは直径約20nmの繊維が多数伸び出してボディ同士をつないでいる。クロマチンボディは対数増殖期には比較的球状から短い棒状であるが、定常期に入るとそれらがつながって、棒の長さが長くなったり、枝別れをする。これはクロマチン繊維が対数期にはDNA複製などのためにほどけているが、定常期になるとヘテロクロマチン化が進ためであると考えられる。間期大核には微小間は見られないが、分裂中には核内に少数の、また核膜直下に多数の微小管が認められるので、大核の分裂が無糸分裂であるとの従来の見解は改める必要があることが分かった。 小核内に見られる構造体は、染色体クロマチンと微小管やその他の繊維状構造体などの核骨格が主なものである。分裂間期の染色体は約50nmの太さの紐状体が2本ずつ計4本が絡み合って直径200〜250nmの染色体を構成している。小核には核小体はない。染色体は、分裂時の極側にあたる方でミクロラメラによって仕切られる。ミクロラメラはLewis(1989)によって動原体と相同なものと考えられたが、定常期後期でも見られることから別の役割も考えなければならないことが明らかとなった。 今後の課題としては、クロマチンを構成するヌクレオソーム構造と20nm繊維構築の大・小核での比較と、接合過程での両核の構造分化過程を調べていく必要がある。
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