研究概要 |
ミドリゾウリムシ(Pramecium bursaria)の生殖核(小核)の微細構造的特徴は,約50nmの太さの紐状クロマチンが撚り合わされて,約200nmの電子密度の高い染色体様クロマチンと,核の一方に片寄りをもってこれを仕切っている核骨格構造体(ミクロラメラ)である。ミドリゾウリムシは25℃では接合開始から約5時間で小核が膨れ始め,減数分裂期にはいる。これにともなって小核クロマチンボディは拡散し始め,約12時間後のクレッセント期(減数分裂のパキテン期に相当)に最も拡散する。接合時に形成された受精核は最初の分裂で2つになると一方が消失し,もう一方がさらに2度の分裂で4個になった後,2個が大核原基,2個が生殖核になる。量核分化の最初の兆候は,ミクロラメラのある側から始まる小核クロマチンの拡散である。これは接合開始から26時間後に見られるが,クロマチンがほぐれた部分とまだ電子密度の高い染色体クロマチン部分とが共存している。この時期にはミクロラメラは残っている。接合開始から30時間では,染色体のクロマチンな拡散が進んでいるが,ミクロラメラはまだ繊維状構造体として残存する。40時間経過したものでは大核原基は,小核由来の特徴を失い,電子密度の高い直径2-5μmの構造体を3-4個含んでいる。このとき核小体になる顆粒の集合体が6-8個みられる。しかしまだクロマチンボディは見られない。90時間後の標本ではクロマチンボディが形成され始めており,原基内に充満した約15-20nmのクロマチン繊維が集合してクロマチンボディを形成している。小核から大核への切り替え時期の特定のために,今後は40から90時間の間の観察をする必要がある。
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