ミドリゾウリムシの大・小核が分化する時の核内構造変化を調べた。大核原基と小核の分化は3回目の受精核分裂の後にみられ、電顕的にはミクロラメラの消失と凝縮クロマチンの脱凝縮によって開始することが分かった。その後容積の増大とクロマチン繊維の増加が進み、大核に特徴的なクロマチンボディが形成される。クロマチンボディの形成は20nm繊維が大核原基内の所々で集合塊をつくり始めることによって始まる。この集合の実態は超薄切片法では分からないので、大核を展開し、クロマチンの分散の様子からDNAパッキングの様子を調べた細胞をNP40で溶解し、大核を単離した。純度は光学顕微鏡、電子顕微鏡で検査して、ほとんど混在物のない標本であることを確かめた。単離大核を界面活性剤を含む液で溶解し、広げさせた後、10%ホルムアルデヒドの上に載せて4500rpmで20分遠心し、カーボン膜を張ったメッシュの上に沈降させた。これを洗浄、乾燥後、10度の角度から白金パラジウムを真空蒸着して電子顕微鏡で観察した。展開された大核クロマチンからのびる最も細い繊維は直径11nmのビーズ状のヌクレオソーム繊維である。これはさらに20-30nm繊維を作るが、これもビーズ状を呈し、折れ曲がりをもった繊維である。この繊維は超薄切片法で観察された大核原基内で集合塊を作る繊維や、大核クロマチンボディを繋ぐ繊維と同じものと思われる。20-30nm繊維は折り畳まれて40-50nm繊維を形成する。この40-50nm繊維が折り畳まれてクロマチンボディを形成することが分かったが、この繊維がループを形成することもあるようだ。小核は単離が容易ではないのでまだクロマチンのパッキングの観察が出来ていない。今後は小核の単離法を確立し、小核染色体でのDNAパッキングの様子を知るとともに、蛍光in situhybridazation法により、増幅された大核内遺伝子の分布状態を調べたい。
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