ミドリゾウリムシの増殖期細胞内の小核の染色体構造を中心に調べると小核は密度の高い染色体クロマチンとミクロラメラ、微小管等からなっている。小核では分裂間期でも直径50nmのクロマチン繊維が数本絡まって直径200nmの染色体を構成する。染色体の一部は、ミクロラメラによって包まれている。二分裂の際には染色体は数本ずつ一緒に両極に移動する。これに対して接合細胞では減数分裂や受精核の分裂で、直径300nm、長さ5υmの典型的なテロセントリックな染色体が観察される。この300nmの染色体は200nm染色体より凝縮度が低い。対数増殖期で盛んにDNA複製をしている時期にはミクロラメラが崩壊し、染色体は、ほぐれるが、50nmの凝縮度の高い繊維はそのままであるように見えるからこの50nm繊維が小核染色体の基本繊維である。一方大核は、様々な長さの直径150nmのクロマチンボディとそれを繋ぐ20nm繊維から成り、他に核小体が散在する。大核と小核の分化は3回目の受精核分裂の後にみられ、ミクロラメラの消失と凝縮クロマチンの脱凝縮によって開始する。その後容積とクロマチン繊維の増大が進み、大核クロマチンボディが形成される。クロマチンボディの形成は20nm繊維が大核原基内の所々で集合塊をつくることで始まる。クロマチンボディの実態は大核を展開して調べた。単離大核を広げると、クロマチンボディから直径11nmのヌクレオソームがさらに20-30nm繊維を作っている。20-30nm繊維はさらに40-50nm繊維を形成し、この40-50nm繊維が折り畳まれてクロマチンボディを形成することが分かった。小核は単離が容易ではなくまだクロマチンのパッキングの観察が出来ない。今後は小核の単離法を確立し、小核でのDNAパッキングの様子を知るとともに、蛍光in situhybridazation法により、増幅された大核内遺伝子の分布状態を調べたい。
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