研究概要 |
1.時間分解蛍光イムノアッセイによる前胸腺刺激ホルモン(PTTH)血中濃度の測定法を新たに確立し,血液サンプルに前処理を施すことなく,簡便かつ高感度・高精度にPTTHを測定できるようにした.次いで,PTTHの血中濃度の変化を,カイコの4令幼虫,5令幼虫,蛹-成虫発生の各期間において詳細に調査した.その結果,以下の非常に興味深い知見を得た.1)血中PTTH濃度は日周期的に変動し,夜間に高い傾向が認められる.2)血中PTTHは発育段階依存的にも増減し,幼虫脱皮・蛹脱皮の直前と成虫発生中期に全体的な減少が見られる.こうした時期はエクジソンが分泌される時期の直後に相当する.3)PTTHは標的器官である前胸腺の退化後(成虫発生後期)にも分泌される.これらの結果は,PTTH分泌の調節には光周期や慨日時計,エクジソンが関与することを示唆し,一方,PTTHには未知の生理機能がある可能性を示し,今後の研究発展のための大きな手掛りを与えた. 2.以前に行なったラジオイムノアッセイの結果は,ボンビキシン様免疫反応性物質が成虫発生期(変態期)の血中に大量に存在することを示した.今回,この物質をアフィニティークロマトグラフィーにより精製しイムノブロット解析したところ,ボンビキシン(6.5KDa)に加えて,より分子量が大きい(8KDa)ペプチドを多量に含むことが明らかになった.この8Kペプチドは複数の抗ボンビキシンモノクローナル抗体に認識され,また低いながらもボンビキシン様生理活性を示すことから,ボンビキシンとは異なる新たなボンビキシン関連ペプチドであることが示唆された.
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