時間分解蛍光免疫測定法による簡便かつ超高感度のPTTH測定法を開発した。次いで、測定に干渉するカイコ血中因子の簡便な除去法を確立し、血中PTTH濃度の測定を可能にした。その結果、大量の血液サンプルのPTTH濃度測定が短時間にできるようになった。カイコ血中PTTH濃度の変動を4令幼虫期から成虫羽化に至る期間について6時間間隔で調査したところ、PTTHが発生時期特異的に分泌されることが明らかとなった。PTTHのピークは、4令2日目、5令のワンダリング期、前蛹期、蛹期前半にそれぞれ認められ、蛹期ではPTTH濃度の日周期変動が認められた。また、5令摂食期にも少量のPTTHが血中に存在すること、羽化直前期にも血中PTTH濃度が上昇することなどの興味深い知見も得た。さらに、同一血液サンプルの中のエクジステロイド濃度をRIAにより測定し、血中PTTH濃度とエクジステロイド濃度の変動の関連を調べた。その結果、エクジステロイドの分泌は時期的にも量的にもPTTH分泌に強く依存していることが判明した。また、前胸腺へのPTTHの作用には、即時的作用と遅延的作用があることが示唆された。5令初期にPTTH抗体を注射するとワンダリングの時期が遅れ、その程度が5令2-3日目に注射した場合に比べて大きいことから、摂食期に存在する少量のPTTHも前胸線に対し何らかの作用をもつと考えられた。一方、PTTHの分泌調節機構に関する研究を行なった。5令初期の幼虫を二群に分け12時間ずらした光周期下に置いたところ、ワンダリング期のPTTHピークの時刻が12時間ずれて生じた。このことは、PTTH分泌のタイミングが光周期に依存的であることを示す。また、5令初期の幼虫を絶食させると血中濃度が低下すること、再摂食により急速に回復することが分かった。この結果は、5令初期の少量のPTTH分泌が栄養依存的であることを示唆する。
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